- 現職 :
- 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター センター長
- 最終学歴 :
- 東京大学大学院総合文化研究科研究科博士課程(2006年)
- 主要職歴 :
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2007年 北海道大学スラブ研究センター 准教授
2017年 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授
2024年 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター センター長
現在に至る
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“Soviet Muslims at the Congress of the Muslim World in Mecca (1926),” in Eileen Kane, Masha Kirasirova, Margaret Litvin, eds., Russian-Arab Worlds: A Documentary History (New York: Oxford University Press, 2023).
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“Officious Aliens: Tatars’ Involvement in the Central Asian Revolution, 1919-1921,” Kritika: Explorations in Russian and Eurasian History 24, no. 1 (2023).
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“‘Bozh’i gosti’ i antiimperializm: Sovetskii khadzh 1920-kh gg.,” in Islam v Rossii i Evrazii (pamiati Dmiriia Iur’evicha Arapova): kollektivnaia monografiia (St. Petersburg: Aleteiia, 2021).
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“Tatars and Imperialist Wars: From the Tsar’s Servitors to the Red Warriors,” Ab Imperio, no. 1 (2020).
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“Elusive Piety: Hajj Logistics and Local Politics in Tatarstan, Dagestan, and the Crimea,” Religion, State & Society 47, no. 3 (2019).
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“Designs for Dâr al-Islâm: Religious Freedom and the Emergence of a Muslim Public Sphere, 1905-1916,” in Randall A. Poole and Paul W. Werth, eds., Religious Freedom in Modern Russia, Kritika Historical Studies Series (Pittsburgh: University of Pittsburgh Press, 2018).
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『イスラームのロシア:帝国・宗教・公共圏 1905-1917』名古屋大学出版会、2017年。
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“Transimperial Muslims, the Modernizing State, and Local Politics in the Late Imperial Volga-Ural Region,” Kritika: Explorations in Russian and Eurasian History 18, no. 2 (2017).
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“A Civil Society in a Confessional State? Muslim Philanthropy in the Volga-Urals Region,” in Adele Lindenmeyr, Christopher Read, and Peter Waldron, eds., Russia’s Home Front, 1914-1922, Book 2: The Experience of War and Revolution (Bloomington: Slavica Publishers, 2016).
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小澤実、長縄宣博編著『北西ユーラシアの歴史空間:前近代ロシアと周辺世界(スラブ・ユーラシア叢書12)』北海道大学出版会、2016年。
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山根聡、長縄宣博編著『越境者たちのユーラシア(シリーズ・ユーラシア地域大国論5)』ミネルヴァ書房、2015年。
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「近代帝国の統治とイスラームの相互連関:ロシア帝国の場合」秋田茂、桃木至朗編『グローバルヒストリーと帝国』大阪大学出版会、2013年。
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“The Hajj Making Geopolitics, Empire, and Local Politics: A View from the Volga-Ural Region at the Turn of the Nineteenth and Twentieth Centuries,” in Alexandre Papas, Thomas Welsford, and Thiery Zarcone, eds., Central Asian Pilgrims: Hajj Routes and Pious Visits between Central Asia and the Hijaz (Berlin: Klaus Schwarz Verlag, 2012).
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“Holidays in Kazan: The Public Sphere and the Politics of Religious Authority among Tatars in 1914,” Slavic Review 71, no. 1 (2012).
- Norihiro Naganawa, Diliara M. Usmanova, and Mami Hamamoto, eds., Volgo-Ural’kii region v imperskom prostranstve, XVIII-XX vv. (Moscow: Vostochnaia literatura, 2011).
以上のほか、現在に至るまで論文著書多数
備考 :2007年 博士(学術)(東京大学)
「ロシアとイスラーム世界の交わる地域に関する帝国論的・社会史的研究」に対して
長縄宣博氏(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授)は、これまでロシアとイスラーム世界の交わる地域に関する帝国論的・社会史的研究を行ってきた。すなわち、ロシア帝国が動揺し解体に向かい、ソ連邦が成立する19世紀後半から20世紀前半までのユーラシア大陸の地殻変動の中で、ロシアが国内外のムスリムと結んだ関係を解明する研究で卓越した貢献をしてきた。
とりわけ、ヴォルガ川とウラル山脈にはさまれた地域に16世紀半ば以来住む少数派のムスリムが、ロシア帝国の統治制度やロシア人社会といかに巧みに交渉してきたか、あるいはオスマン帝国との往来が現地のムスリム社会にどのような影響をもたらしてきたかを究明してきた。
長縄氏の研究成果をまとめた単著『イスラームのロシア―帝国・宗教・公共圏 1905-1917』(名古屋大学出版会、2017年)は、アジア史研究への顕著な貢献を検証する三島海雲学術賞を2019年に受賞し、同氏の研究がロシア史の枠をはるかにこえるインパクトを持っていることを証明した。
また、長縄氏の諸論文はロシア・ユーラシア史研究の最高峰である学術雑誌Slavic Review, Kritika, Ab Imperioなどに掲載されている。前二者の雑誌のEditorial Boardにその名を連ねていることは、日本人としては言うまでもなく、アジア出身の研究者としても前人未到であると評価できるのである。
具体的には、Slavic Review誌の第71巻(2012)においては、“Holidays in Kazan: The Public Sphere and the Politics of Religious Authority among Tatars in 1914”と題する論文が、 Kritika: Explorations in Russian and Eurasian History誌の第24巻(2023)においては、 “Officious Aliens: Tatars’ Involvement in the Central Asian Revolution, 1919-1921”などの論文が、 またAb Imperio誌の第1号(2020)においては、“Tatars and Imperialist Wars: From the Tsar’s Servitors to the Red Warriors”と題する論文が掲載され、同誌のAb Imperio Award 2020 for the Best Study in New Imperial History and History of Diversity in Northern Eurasia, up to the Late Twentieth Centuryに指名されている。
長縄氏は近年取り組んでいる初期ソ連時代の中東外交に関する研究によって、プリンストン高等研究所歴史学院に招聘されるなど、国際的にも注目を集めている。
以上のような研究業績により、長縄氏は日本学術振興会賞および日本学士院奨励賞(2021年)を受賞している。また、同氏は北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの「領域を超えた地域研究振興のための拠点形成」関連プロジェクト「国際的な生存戦略研究プラットフォームの構築」の研究代表者を務めている。それは、スラブ・ユーラシア研究が積み重ねてきた知見を現代世界の危機の理解に応用するものであり、ロシア・東欧地域の人文社会科学研究に新たな使命を与えるものであると評価されている。
さらに、長縄氏は複数の国際学術プロジェクトで重要な役割を果たして成功に導くなど、個人研究における目覚しい進展に加えて、スラブ・ユーラシア地域研究の国際的な文脈において、わが国の展開を強力に牽引する重要な役割を担っている。
以上の理由で、長縄宣博氏は奨励賞の受賞にふさわしいと評価するものである。
(大同生命地域研究賞 選考委員会)