- 現職 :
- 国立民族学博物館 学術資源研究開発センター 准教授
- 最終学歴 :
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上智大学大学院・外国語学研究科地域研究専攻・博士後期課程
満期退学(2003年)
- 主要職歴 :
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2003年 日本学術振興会 特別研究員(PD)
2008年 日本学術振興会 海外特別研究員PD
2010年 東海大学海洋学部 専任講師
2014年 東海大学海洋学部 准教授
2019年 国立民族学博物館人類文明誌研究部 准教授
2021年 国立民族学博物館学術資源研究開発センター 准教授
- 現在に至る
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Development of bone and lithic technologies by anatomically modern humans during the late Pleistocene to Holocene in Sulawesi and Wallacea〔Quaternary International 596:124-143,他6名との共著 2021〕
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Pleistocene Archaeology-Migration, Technology, and Adaptation〔IntecOpen Publisher A. Pawlikとの共編著、2020〕
- Island migration and foraging behaviour by anatomically modern humans during the late Pleistocene to Holocene in Wallacea: New evidence from Central Sulawesi, Indonesia.〔Quaternary International 554:90-106, 他7名との共著、2020〕
- Lapita maritime adaptations and the development of fishing technology: A view from Vanuatu, Bedford, S. and M. Spriggs eds, Debating Lapita: Chronology, Society and Subsistence 〔Terra Australis Series 52, ANU Press, pp. .415-438, S. Hawkins・S. Bedfordとの共著2019〕
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Technological and behavioural complexity in expedient industries: The importance of use-wear analysis for understanding flake assemblages. 〔Journal of Archaeological Science 112,他8名との共著、2019〕
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Traces of Early Austronesian Expansion to East Indonesia? New Findings of Dentate-Stamped and Lime Infilled Pottery from Central Sulawesi. 〔Journal of Island and Coastal Archaeology 14(1): 123-129 、他6名との共著、2019〕
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Coastal Subsistence Strategies and Mangrove Swamp Evolution at Bubog I Rockshelter (Ilin Island, Mindoro, Philippines) from the Late Pleistocene to the mid-Holocene. 〔Journal of Island and Coastal Archaeology 14(4) :584-604、他7名との共著、2019〕
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Development of pottery making tradition and maritime networks during the Early Metal Ages in Northern Maluku Islands.〔AMERTA 35 (2): 109-122、他6名との共著、2018〕
- 『海の人類史:東南アジア・オセアニア海域の考古学 増補改訂版』〔雄山閣、2018〕
- 『海民の移動誌-西太平洋のネットワーク社会』〔昭和堂、長津一史・印東道子との共編著、2018〕
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『海洋考古学入門―方法と実践』〔東海大学出版部、木村淳・丸山真史との共編著、2018〕
- Early Metal Age interactions in Island Southeast Asia and Oceania- jar burials from Aru Manara, northern Moluccas. 〔Antiquity 92 (364):1023-1039、他5名との共著、2018〕
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Prehistoric Marine Resource Use in the Indo-Pacific Regions. 〔ANU Press、A.Morrison, D. Addison との共編著2013〕
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Pelagic Fishing at 42,000 Years Before the Present and the Maritime Skills of Modern Humans. 〔Science 334:1117-1121、S. O’Connor, C. Clarksonとの共著、 2011〕
- 『海域世界の地域研究:海民と漁撈の民族考古学』〔京都大学学術出版会、2011〕
以上のほか、現在に至るまで論文著書多数
備考 :2006年 博士(地域研究)(上智大学)
「東南アジア海域における海産資源利用の人類・考古学的研究」に対して
小野林太郎氏は、人類史的視点に基づく海域研究の枠組みを設定し、主として東南アジア島嶼部で考古学調査を精力的に展開している。その調査対象地域は広く、年代的にも更新世代から完新世代まで数万年におよぶ。
人類の拡散移動史を解明する際、東南アジア海域(ウォーレシア)は極めて重要な地域である。特に、人類がオセアニア海域へと移動する前後に世界で初めて海を越えた地域であったことから、人類と海の関係、海洋資源の利用、渡海技術など、多くの興味深い人類学的研究課題を提供している。しかし、島嶼域であることに加え、海面変動の影響もあり、数万年におよぶ人類の痕跡を探すには非常な困難を伴う。人類がどのルートを通って移動したのかは人類遺跡の発掘から探るしかなく、年代を提供する遺跡数が増加することでその移動経路の解明が可能になる。
これまで小野氏は、人間居住の痕跡を求めて東南アジア島嶼部を中心に計8か国で20遺跡以上の発掘調査に従事してきた。また調査許可を取るのが非常に困難なマレーシアやインドネシアで考古学調査を継続的に行っている外国人研究者は極めて少なく、日本人としては唯一である。特に、インドネシアでは15年以上にわたり、現地の研究機関との共同調査を継続している。豊富な調査成果は、更新世(考古学的には旧石器時代)にさかのぼる現生人類(ホモ・サピエンス)の移動ルートの解明に資する遺跡の発見と発掘、魚類を中心とした海洋資源利用の多様性などに関する新知見を多く含み、多数の学術論文を国内外で発表している。
小野氏の研究の特徴の一つは、魚骨鑑定の専門的知識を積極的に活用していることである。遺跡から出土する魚骨類は、そこで生活していた人類が食料としていたことを意味し、魚種を復元できれば、その生息域から当時使われた漁法を推測することも可能になる。氏の魚骨鑑定能力は高く評価されており、海外の考古学者からの分析依頼も多い。それらに応じることによって、人類の海洋資源利用の歴史研究を大いに進展させている。これまで東南アジア島嶼部のみならず、オセアニアの10を超える遺跡から発掘された魚骨の鑑定協力をおこなってきた。中でも、東ティモールから発掘された旧石器時代の魚骨資料鑑定では、42,000年前には人類がすでにマグロ類をとらえて食用としていた世界最古の事例としてScienceに発表して国際的に話題になった。一人の考古学者が調査できる遺跡数には限りがあるが、このような鑑定協力を行うことによって、各地で発掘を行う考古学者との共同研究をすすめて資料や研究範囲の拡大を進めるメリットは大きく、将来的な研究展開に大きな期待がもたれる。
小野氏の研究のもう一つの特徴は、人類の海産資源利用史の解明のため、民族考古学的アプローチを積極的に取り入れる姿勢である。東南アジア海域における数万年に及ぶ人類の海産資源利用の歴史を、考古学的資料には残らない民族学的資料の側面から解明しようとするものである。氏は、ボルネオ島で新石器時代の遺跡を発掘した後、約半年間にわたって同遺跡周辺の海民バジャウ村落に住み込み、サンゴ礁漁労に関する定量的データを収集した。この民族考古学的データを基にした英語論文は、現在も被引用率の高い論文となっており、さらに2005年に上智大学に提出した博士号論文をもとにした著書『海域世界の地域研究-海民と漁撈の民族考古学』(地域研究叢書22、京都大学学術出版会、2011年)は、海民研究への新しい視点を提供したものとなっている。
近年は、活動の場をオセアニアへと広げ、メラネシアのヴァヌアツや、ポリネシアのトケラウ諸島での発掘調査のほか、ミクロネシアのポンペイ島で発掘調査を継続中である。2018年には『海の人類史-東南アジア・オセアニア海域の考古学』(増補改訂版、雄山閣)で、人類の海との関わりの歴史を広く紹介した好著を出版している。また、海域世界における人類の移動を理解するため、ネットワークに着目した学際的研究を展開していることも高く評価されている(『海民の移動誌-西太平洋のネットワーク社会』小野他共編、2018年 昭和堂)。
その他、海洋考古学の分野においても活躍中で、水中・海底遺跡に残された人類活動の痕跡を対象とする研究を、沖縄などで行っており、水中文化遺産の保全や活用に関する研究にもその視野を広げて貢献している。
以上のように卓越した研究業績を重ねてきた小野氏が、将来的にも東南アジア島嶼域を対象とした地域研究の国際的牽引者となることが期待できることから、選考委員会は大同生命地域研究奨励賞にふさわしいものとして授与を決定した。
(大同生命地域研究賞 選考委員会)