
- 現職 :
- 法政大学経済学部 教授
- 最終学歴 :
- 東京大学農学生命科学研究科博士課程修了(2015年)
- 主要職歴 :
-
2018年 プリンストン大学 歴史学部 ポスドクフェロー
2020年 愛知大学 国際コミュニケーション学部 准教授
2023年 法政大学 経済学部 准教授
2024年 法政大学 経済学部 教授
- 現在に至る

2018年 プリンストン大学 歴史学部 ポスドクフェロー
2020年 愛知大学 国際コミュニケーション学部 准教授
2023年 法政大学 経済学部 准教授
2024年 法政大学 経済学部 教授
友松夕香「つながりが生む断絶――グローバル格差の感情経験」『世界思想』 53号,2026年,36-41頁
友松夕香「首長制と国家建設の逆説――ガーナの土地、政党政治、国際開発」武内進一(編著)『アフリカの国家建設──自分たちの国をつくる』白水社, 2026年, 89-113頁
友松夕香「収穫現場の自治――シアナッツの「盗み」と防衛を通じた公平性の交渉」杉山祐子(編)『くらしが変えるお金の意味――アフリカと日本の地方にみる人びとの営み』弘前大学出版会, 2026年, 221-249頁
友松夕香「大衆のまなざしを知る――西アフリカにおけるロシアと中国の台頭」『學士會会報』977号,2026年,25-29頁
友松夕香「グローバル格差と対アフリカ外交――現地の大衆感情と目線から考える」『AFRICA』2504号,2025年,22-27頁
友松夕香『グローバル格差を生きる人びと――「国際協力」のディストピア』岩波書店,2025年
友松夕香「料理をとおして会話する――フィールドの女性たちとの関係性の構築」湯澤規子・ 伊丹一浩・藤原辰史(編)『入門 食と農の人文学』ミネルヴァ書房,2024年,185-194頁
以上のほか、現在に至るまで論文著書多数
備考 :2015年 農学博士(東京大学)
「西アフリカの民族誌的研究に基づく開発・ジェンダー・ グローバル格差研究の展開」に対して
友松夕香氏は、西アフリカでの約20年にわたる民族誌的研究を基盤に、開発・ジェンダー・グローバル格差といった普遍的課題に理論的示唆を与え、地域研究の新しい地平を切り拓いてきた。
まず、博士論文を基にした主著『サバンナのジェンダー:西アフリカ農村経済の民族誌』(2019年、明石書店)では、ガーナ北部の農村部を事例に、ジェンダー格差の解消を目指す開発政策が必ずしも女性の福利向上につながらないことを明らかにした。
フィールドワークによって収集した膨大なデータの分析を通じて、男性と女性の生計関係が相互依存的であることや、女性を対象にした農業支援がむしろ女性の労働負担を強化してしまうことを実証した意義は大きい。地域の人びとの現実から、政策が前提としてきた農村女性像や「自立」概念そのものを問い直し、ジェンダーや開発という普遍的な課題を再考する視点を提示した点は、この著作の独自性を示す重要な成果である。
また、『グローバル格差を生きる人びと:「国際協力」のディストピア(岩波新書2070)』(2025年、岩波書店)では、国際協力やグローバル化が世界の接続を進める一方で、格差をめぐる不満や他者への不信を生み出していることを、西アフリカの人びとの日常経験を通じて描き出した。従来の国際協力研究では、格差は主として所得や資源配分の問題として捉えられてきたが、本書はそれを人びとの感情や世界認識の形成と結びついた経験として分析した点に特徴がある。とりわけ、国際ロマンス詐欺や国際陰謀論の広がりを、単なる逸脱的現象や誤情報の問題としてではなく、グローバルな接続のなかで生じる不公平感への応答として理解しようとした点は独創的である。グローバル格差を感情の経験という視点から捉え直した本書は、国際協力のみならず、現代世界における社会的不信や分断の理解にも重要な示唆を与えている。
両著作は、開発や国際協力における支援する側の制度設計や「善意」を相対化し、地域に生きる人びとの論理から国際協力を問い直すという地域研究の新しい地平を切り拓く優れた成果である。 このほか、英語による研究成果も発表してきた。とくに、国際学会 Society ofEthnobiology の学会誌 Journal of Ethnobiology に2014年に掲載された論文 “Parkia biglobosa-dominated cultural landscape: An ethnohistory of the Dagomba political institution in farmed parkland of northern Ghana”では、ガーナ北部の農地景観を対象に、人びとの環境利用、政治制度、ジェンダー実践が相互に形成されてきた歴史的過程を明らかにした。調味料となる実をつける樹木を称号保持者が所有するという一見排他的な制度が、樹木の保全に寄与してきただけでなく、料理を担う女性たちへの資源分配を通じてジェンダー関係を構築し、日常の食生活を支えてきたことを明らかにした点は、環境利用・政治制度・ジェンダー実践の複雑な連関を緻密に描き出した成果として高く評価できる。
友松氏の研究は、国際協力の実務経験に根ざした問題意識と地域研究の成果を結びつけてきた点に特色がある。大学院入学前には、ブルキナファソにて青年海外協力隊活動に従事した。また、修士課程学生時代には、ケニアの国際アグロフォレストリー研究センターにて、農業開発や環境政策に関する実践的な知見を蓄積し、共著論文を執筆している。こうした国際的な実務と研究の経験が、地域研究の成果を国際協力の課題へと接続する現在の研究へと発展しているといえる。 現在は、科研費・基盤研究(B)「格差を是正する国際協力:地域研究からの理論構築」の研究代表者として、人類学、経済学、政治学を横断する学際的研究を主導している。国際協力が世界の接続を促進する一方で新たな格差や不平等を生み出す過程を分析し、その是正に向けた理論的枠組みの構築を目指している。現地に根ざした実証研究と普遍的な理論構築を結びつけようとするこうした研究は、地域研究の枠を超えて現代の国際協力研究に新たな方向性を示すものである。
以上のように、友松夕香氏は、アフリカ地域での国際協力の実務経験から出発し、農村部の暮らしに関する長期的な民族誌研究を基盤として、ジェンダー・開発・国際協力・グローバル格差をテーマに研究を展開させてきた。現代世界における不平等や国際協力・共存の課題を問うこれら質の高い研究成果は、地域研究の射程を大きく広げるものである。今後も地域理解を深めながら国際協力の実践・政策へと繋ぐ地域研究の牽引者として国際的な研究展開が大いに期待されることから、選考委員会は大同生命地域研究奨励賞の授与を決定した。