- 現職 :
- 上智大学アジア人材養成研究センター 研究員
- 最終学歴 :
- 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 社会開発工学専攻 博士課程修了(1984年)
- 主要職歴 :
-
1984年~2014年 一般財団法人 日本品質保証機構 主任技術員
・環境アセスメント業務および地球温暖化対策認証業務
に従事
1991年~2002年 上智大学アンコール遺跡国際調査団 メンバー
・プノンペン王立芸術大学 非常勤講師
・「文化と環境」集中講義、現地実習指導
・カンボジア言語文化研究に従事
1993年~2002年 日本・カンボジア法律家の会 メンバー
・カンボジアの法律大学、法曹関係団体、関係者に法律
支援
1999年~2002年 カンボジア閣僚評議会「クメール文字ユニコード表示
方式標準化委員会」アドバイザー
・国際規格ISO/IEC JTC1/SC2/WG2に提案
2002年~2013年 上智大学 共同研究員
・カンボジアにおける文化協力に従事
2003年~2006年 アプサラ機構(アンコール 遺跡世界遺産を管轄する
カンボジア政府機関) アドバイザー
・アンコール遺跡地域にISO14001導入指導
(2006年に認証取得、世界遺産として初めて)
2014年~ 上智大学アジア人材養成研究センター
研究員、現地駐在員
・アンコール・ワット遺跡保存修復プロジェクトに従事
・アンコール遺跡地域の環境保全活動に従事
現在に至る
- 『អង្គរនិងខ្ញុំ -ជីវិតរបស់ជនជាតិជប៉ុនម្នាក់ជាមួយអង្គរ-』〔カンボジア語訳書:石澤良昭著『アンコール・ワットと私』(連合出版)、2022〕
- 「アンコール遺跡地域での子ども環境教育活動」〔第17回アンコール遺跡国際調査団報告、上智大学アジア人材養成研究センター、2012〕
-
「世界遺産への挑戦 -アンコ-ル地域環境保全への取り組み」〔『グローバル/ローカル文化遺産』、上智大学出版 2010〕
- 『ស្តង់ដារអន្តរជាតិ ISO14001:2004 ប្រព័ន្ធគ្រប់គ្រងបរិស្ថាន』〔カンボジア語訳書:“International Standard ISO14001:2004 Environmental Management systems”、日本品質保証機構 2005〕
-
「アンコール都城を取り囲む自然環境」〔『季刊・文化遺産』18、2004〕
- 「アンコール旧都城を取り囲む文化環境 -文化・自然・人間-」〔第7回アンコール遺跡国際調査団報告、上智大学アジア文化研究所 2002〕
- 「自然環境から見たアンコール遺跡」〔『アンコール遺跡の建築学』、連合出版2001〕
- 「アンコール旧都城を取り囲む文化環境」〔『アンコール遺跡と社会文化発展』、連合出版 2001〕
- 『開発途上国環境保全計画策定支援調査報告 -カンボディア王国-』、環境省委託2001〕
- 『ច្បាប់រដ្ឋប្បវេណី (ករណីប្រទេសជប៉ុន)』 〔カンボジア語訳書:池田真朗著『民法への招待』、日本・カンボジア法律家の会 2000〕
- 『ច្បាប់ព្រហ្មទណ្ឌ (ករណីប្រទេសជប៉ុន)』〔カンボジア語訳書:中山研一著『刑法入門』、日本・カンボジア法律家の会 1999〕
- 「カンボジアの遊戯」〔『民族遊戯大事典』、大修館書店 1998〕
- 「トンレサップ湖とカンボジアの人々 ―大いなる湖の恩恵:人間・自然・文化―」〔『カンボジアの文化復興』14、上智大学アジア文化研究所 1997〕
- 「危機にある生物多様性 ―カンボジアから、『世界』629、岩波書店 1996」
- 「カンボジア人にとっての文化遺産、国際協力と日本への期待」〔『まちなみ』20、大阪建築士事務所協会 1996〕
- 「カンボジアのことわざ」〔『世界の故事・ことわざ』、自由国民社 1996〕
- 「アンコール地域の水環境と今後の課題」〔『カンボジアの文化復興』11、上智大学アジア文化研究所 1995〕
- 「アンコール遺跡と環境保全」〔『文化遺産の保存と環境』、講座「文明と環境」12、朝倉書店 1995〕
- 『カンボジア語実用会話集』〔連合出版 1993、第4版増補 2001〕
- 「アンコール地域の陸水環境について -水質の予備調査-」〔『カンボジアの文化復興』6、上智大学アジア文化研究所 1992〕
以上のほか、現在に至るまで著書・論文多数
備考 :1984年 社会開発工学博士(東京工業大学)
「アンコール・ワット『ISO14001』(環境マネジメントシステム)認証取得のための環境保全活動」に対して
カンボジアは1993年に和平を達成した。しかし、2000年代には年間約300万人の観光客が押し寄せ、ゴミ、排気ガス、水質汚染など、深刻な環境問題に直面した。
ラオ氏はこの惨状を解決するため、カンボジア政府に対して、環境保全のため「ISO14001(環境マネジメントシステム)」の認証取得を進言し、その『マニュアル教本』をカンボジア語に全訳した。そのうえで、その『マニュアル教本』を売店、集落、そして学校などに配布し、ゴミ・ゼロ活動を3年にわたり実施した。
その結果、2006年、厳しい審査を経てユネスコ世界遺産の中でアンコール遺跡が初めて「ISO14001認証」を取得した。
ラオ氏はアンコール遺跡から湖岸沿いに南へ約100キロのストウン市に生まれた。地元の学校を経て首都プノンペンのリセ・シソワットに入学し、卒業後は最難関の日本国政府奨学金留学生として東京工業大学に留学した。同大学で工学博士号を取得した後、通産省(当時)所管の財団法人「日本品質保証機構(JQA)」に入社した。
当時、カンボジアにおいてはポル・ポト政権が誕生したため、帰国を断念し、日本国籍を取得した。しかし、ラオ氏は親戚や家族が残るカンボジアの難民救済に尽力した。
ラオ氏は1991年、上智大学アンコール遺跡国際調査団の通訳としてカンボジアに一時帰国したときに、住民の飲み水の水質調査、水環境、トンレサップ湖などの調査をおこなった。その調査結果の報告は、1992年3月に「アンコール地域の陸水環境について―水質の予備調査」『カンボジアの文化復興』Vol.6、pp.109-128、(上智大学アジア文化研究所)、1993年11月に「アンコールの環境問題―水環境を中心に―」『第2回アンコール遺跡国際調査団報告』(上智大学アンコール遺跡国際調査団)、1994年11月には「プノンペン市内におけるトンレサップ川の堆積物」『カンボジアの文化復興』Vol.10、pp.82-93、(上智大学アジア文化研究所)、1995年1月「アンコール地域の文化遺産と自然環境」『アンコール遺跡調査報告会』(上智大学アジア文化研究所)、1995年5月「アンコール地域の水環境と今後の課題」『カンボジアの文化復興』Vol.11 pp.85-98、(上智大学アジア文化研究所)、1996年1月「アンコール地域の水環境―継続調査―」『カンボジアの文化復興』Vol.12 pp.91-98、(上智大学アジア文化研究所)、1997年7月には「トンレサップ湖とカンボジアの人々―大いなる湖の恩恵:人間・自然・文化―」『カンボジアの文化復興』Vol.14、pp.83-107、(上智大学アジア文化研究所)、あるいは2010年には“International Standard ISO14001:2004 Environmental Management systems –Requirements with guidance for use”(クメール語訳書)、(79p)、(財)日本品質保証機構、を刊行するなど、一連の研究業績にまとめられている。
また、2001年3月には「アンコール遺跡地域での子ども環境教育活動」『第17回アンコール遺跡国際調査団報告』(上智大学アジア人材養成研究センター)、2002年2月には「アンコール遺跡と環境保全」『文化遺産の保存と環境』、講座「文明と環境」第12巻、朝倉書店、pp.121-138、そして「アンコール都城を取り囲む自然環境」『季刊・文化遺産』Vol.18、pp.68-73(並河萬里写真財団)、2012年3月など遺跡と自然環境といったテーマでも論考を発表し、2004年10月には「アンコール旧都城を取り囲む文化環境―文化・自然・人間―」『第7回アンコール遺跡国際調査団報告』(上智大学アジア文化研究所)、2001年4月には『開発途上国環境保全計画策定支援調査報告―カンボディア王国―』、環境省委託、といった報告書とともに、さらに、「アンコール旧都城を取り囲む文化環境」、『アンコール遺跡と社会文化発展』、pp.99-118、連合出版、2001年7月、「自然環境から見たアンコール遺跡」、『アンコール遺跡の建築学』、pp.93-112連合出版、2005年3月、「世界遺産への挑戦-アンコ-ル地域環境保全への取り組み」、『グローバル/ローカル 文化遺産』、pp.118-132、上智大学出版、共著などといった、アンコール遺跡をめぐる環境保全に係わる諸問題についても論考を発表している。
なお、ラオ氏は「日本品質保証機構(JQA)」を定年退職後、小・中学校での環境教育を普及させるため、住居を祖国へ移して現在に至るまで奉仕活動を継続している。
以上のように、ラオ氏は、ユネスコ世界遺産の中で、初めてアンコール遺跡が「ISO14001認証」を取得することに貢献し、また、カンボジアにおいて、小・中学校での環境教育を普及させるため、現在に至るまで奉仕活動を継続している。よって、選考委員会は一致して大同生命地域研究特別賞を授与することを決定した。
(大同生命地域研究賞 選考委員会)