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赤木 攻 氏
略 歴

赤木 攻

現職 :
大阪外国語大学 名誉教授、元大阪外国語大学 学長
最終学歴 :
大阪外国語大学外国語学部卒(1967年)

(備考:タイ国チュラーロンコーン大学留学(1967年~69年))

主要職歴 :

1969年 大阪外国語大学外国語学部 助手

1975年 チュラーロンコーン大学・タムマサート大学 客員講師

    (~77年)

1985年 在タイ日本国大使館 専門調査員(~87年)

1988年 大阪外国語大学地域文化学科 教授

1992年 日本学術振興会バンコク研究連絡センター長(~93年)

1994年 大阪外国語大学 学生部長

1999年 大阪外国語大学 学長(~2003年)

2004年 日本学生支援機構 参与(東京国際交流館長)(~08年)

2008年 東京外国語大学 特任教授(~10年)

2013年 大阪観光大学国際交流学部 教授・学部長

2016年 大阪観光大学 学長

2020年 大阪観光大学退職

       現在に至る

主な著書・論文
  1. 『タイ日大辞典 改訂版』めこん(共編)、2023

  2. 『タイのかたち』めこん、 2019

  3. 「王政と正当性―タイ政治の核心]『東アジア政治のダイナミズム』青木書店、2002

  4. 『続・タイ農村の構造と変動―15年の軌跡』勁草書房(共編著)、2000

  5. 『タイ:工業化と地域社会の変動』法律文化社(共編著)、1995

  6. 『タイの政治文化―剛と柔』勁草書房、1989

  7. 「村落構造」北原淳(編)『タイ農村の構造と変容』勁草書房、1987

  8. 「タイにおける官僚政治の社会・文化的基盤試論」『アジア研究』第27巻第3号、1980

  9. 「タイ国の法体系に関する一考察(Ⅰ),(Ⅱ)」『東南アジア研究』第13巻第3号, 1975、第13巻第4号,

      1976

以上のほか、現在に至るまで論文著書多数

備考 :1996年 (タイ王国)勲三等白象章受賞

    1990年 第二回アジア・太平洋賞特別賞受賞(毎日新聞社、アジア調査会)

業績紹介

タイ日大辞典の編纂およびタイの政治社会文化に関する研究」に対して

 

 

 

 赤木攻氏は、日本におけるタイ研究において、これまで計り知れない功績を挙げてきた地域研究者である。

 

 赤木氏の研究は四つの柱をもつ。一つは、専門であるタイ語の教育と普及である。とくに辞典としては、世界でまれに見るほどの詳細な内容を誇る冨田竹二郎氏『タイ日辞典』の編集に長年にわたって協力するとともに、2023年には、冨田版から動植物の語句を省き、付録類を簡略化した『タイ日大辞典改訂版』を冨田氏とともに刊行している。これは幅広い利用者層を想定したものであり、現在、日本で利用できる最も優れたタイ語辞典といえる。

 

 第二の柱は、タイの農村社会の政治構造に関する研究である。北原淳神戸大学名誉教授とともに、タイ東部および東北部の農村社会を対象にした現地調査を実施し、市場経済の浸透により変化していく政治構造や社会関係を明らかにした。その研究成果は『続・タイ農村の構造と変動』(2000年)などに結実している。

 

 第三の柱は、第二の柱を含め、タイを対象とした地域研究を総合的に推進した点である。具体的には、従来言語学や語学習得の授業を主に行ってきた大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)の教育・研究体制に、社会科学としての地域研究の手法や研究組織を導入した点があげられる。その過程で、『タイの政治文化―剛と柔』(1989年)や『タイのかたち』(2019年)などのタイ政治文化に関する学術書を出版している。また同大学内にアジア研究会を創設し、研究雑誌『アジア太平洋論叢』の刊行にも尽力した。なかでも先述した『タイのかたち』は、タイを根源的に論じた画期的な著作であり、三つの世界論(タイ世界、サヤームの世界、マレー=ムスリムの世界)を縦軸に、そして王権・仏教・タイ語を横軸に設定した上で、タイをタイたらしめている特徴と要素を縦横無尽に論じている。これほど独創的なタイ王国論は、言語と社会科学の双方に通じてきた赤木氏にして初めて可能になったと言わざるを得ない。 

 

 第四の柱は、長年にわたってタイの政治社会事情についての時事評論を発表してきた点である。たとえば、『タイ国情報』(日本タイ協会)では「講座タイ現代史」(1995年5/6月~2005年1月)と題する時事評論を計51回、「パイパイマーマー」(2005年3月~2019年7月)と題する時事評論を計71回、『アジア経済ニュース』((株)NNA、共同通信社)では「タイ政治社会の潮流」(2007年7月15日~現在)と題するじつに423回にわたる時事評論を公表してきた。これらの時事評論は、赤木氏の傑出した語学力とタイの歴史と文化に対する深い造詣があってこその考察であり、後世に残る仕事であると考えられる。

 

 このほか、赤木氏は、日本とタイとの間の草の根交流を継続的に行ってきた。日本とタイの友好親善に関心を抱く人々を結集する場として設立された「日本タイクラブ」の代表を長らく務め、市民レベルでの日タイ相互交流の実践に取り組み、それら諸活動を通して両国の親睦を推進している点は、研究を社会に拓こうとする赤木氏の姿勢を読み取ることができる。

 

 以上のように、日本におけるタイの地域研究の礎を築き、多大なる研究成果をあげたのみならず、その成果を惜しむことなく一般社会と共有してきた点を高く評価し、大同生命地域研究賞にふさわしい研究者として選考した次第である。

 選考委員会は一致して大同生命地域研究賞を授与することを決定した。

  (大同生命地域研究賞 選考委員会)