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ティムール ダダバエフ 氏
略 歴

ティムール ダダバエフ

現職 :
筑波大学 人文社会系 准教授
最終学歴 :
立命館大学国際関係研究科 博士後期課程修了(2001年)
主要職歴 :

2002年 日本学術振興会外国人特別研究員(国立民族学博物館)

2004年 東京大学東洋文化研究所助教授

2006年 筑波大学人文社会科学研究科国際政治経済専攻助教授

2008年 筑波大学人文社会系准教授

     現在に至る
主な著書・論文
  1.  Social Capital Construction in Post-Soviet Central Asia, with Tsujinaka Yutaka and Murod Ismailov, NY: Palgrave Macmillan.2017年、共編著

  2.  Kazakhstan, Kyrgyzstan, and Uzbekistan: Life and Politics during the Soviet Era,Co-edited with Hisao Komatsu, NY: Palgrave Macmillan.

     2017年、共編著

  3.  Japan in Central Asia: Engagement, Strategies and Neighboring Powers, New York:  Palgrave Macmillan.2016年、単著

  4.  Identity and Memory in Post-Soviet Central Asia, Oxon:Routledge。2015年、単著

  5. 『中央アジアの国際関係』、東京大学出版会、2014年2月、単著

  6.  Central Eurasian Studies: Past, Present and Future, Istanbul: Maltepe University,共編著。2011年、共編著

  7. 『記憶の中のソ連』、筑波大学出版会、2010年、単著

  8. 『社会主義後のウズベキスタン』、アジア経済研究所、2008年、単著

  9. 『躍動するアジアの信念と価値観』、明石書店、猪口孝、田中明彦、園田茂人と共編著。2007年、共編著

  10. 『マハッラの実像』東京大学出版会、2006年、単著

  11. 『アジア都市部の価値観とライフ・スタイル』明石書店、猪口孝、田中明彦と共編著。2005年、共編著

  12.  Values and Life Styles in Urban Asia, Mexico: SIGLO XXI Editors, 2005年、共編著

  13.  Towards Post-Soviet Central Asian Regional Integration,Tokyo: Akashi, 2004年、単著

以上のほか、現在に至るまで論文著書多数

備考 :2001年 国際関係学博士(立命館大学)

業績紹介

「中央アジア地域における社会主義後の政治、アイデンティティ、社会の変容に関する研究」に対して

 ダダバエフ氏は、国費留学生として立命館大学に学び、その後、国立民族学博物館や東京大学などを歴任し、現在、筑波大学で准教授を務めている。専門分野は中央アジアを対象とする国際関係論であり、現地社会の政治、民族、宗教に関する論文を数多く執筆している。

 

 ダダバエフ氏の研究の特色は、何よりも、社会主義以後の中央アジア諸国に関する国際関係論を、現地社会に内在する歴史的・文化的特徴と積極的に結びつけ、地域全体の持続的な発展と社会的な安定を模索してきた点にある。また、文化に対する深い洞察力に加えて、母語のウズベク語はもとより、英語・ロシア語・日本語の能力を活かした国際発信力の高さは刮目すべきものがある。

 

 これまで、暴力とそのディスコースに関する研究の多くは、軍事的な介入をはじめとする軍事的な紛争解決から平和維持を追求しがちであるのに対して、地元出身の同氏はあくまでも平和的な紛争予防解決を希求する。例えば、1989年のフェルガナ事件(トルク・メセへティン人対ウズベク人)、1990年のオシュ事件(キルギス人対ウズベク人)、1992-97年のタジキスタン内戦などを取り上げ、ウプサラ大学紛争解決学部(1999年)、国連大学(2000年)、ユネスコ小渕恵三基金とトヨタ財団(2001年-2002年)、国立民族学博物館(2002年-2004年)から助成を受け、伝統的に民族間で共有されてきた社会的空間(在住コミュニティなど)が民族間対話の手段になりうることを指摘してきた。

 

 さらに、ダダバエフ氏は中央アジア地域が直面している様々な争いや問題を「国家」や「政府」といった単位のみで解決するのは困難であると指摘し、「国家間関係」に加えて、一般国民の歴史や地域についての認識や地域としての共通のアイデンティティに着目することによって、中央アジア地域全体の潜在能力と統一感を高める必要を強調してきた。と同時に、同氏はローカルなアクターの役割が重要であることを訴え、コミュニティ・レベルでの共存のメカニズムならびに政府と地域共同体との関係も研究してきた。例えば、国際連合大学の秋野豊フェローシップ(2004年-2005年)、東京大学東洋文化研究所そして東京大学AGS研究会研究助成を受け、その成果を『マハッラの実像』(東京大学出版会、2006)、『社会主義後のウズベキスタン』(アジア経済研究所、2008年)、『記憶の中のソ連』(筑波大学出版会、2010)にまとめている。

 

 以上のように、ダダバエフ氏は、中央アジアの国際関係の現状と課題について、国家間とローカルなアクターの双方の役割に注目し、中央アジアの国際関係のメカニズムとその動向、そしてこれらの新独立国家の国際社会とのかかわりの事例研究を積み上げている。

 

 近年では、上述のような研究を継続しながら、中央アジア地域における水・領土問題にみる地域統合の可能性、そのためのユーラシア共同体、上海協力機構(SCO)、中央アジアプラス日本といった国際的な協力体制を分析し、『中央アジアにおける国際関係』(東京大学出版会、2014年)、『Japan in Central Asia(NY: Palgrave, 2015年)』などを刊行した。

 

 さらに、社会主義時代に対する一般の人々の記憶の記録化と分析にも従事しており、すでに研究書として『Identity and Memory in Post-Soviet Central Asia (Oxon: Routledge, 2015年)』、『Life and Politics during the Soviet Era、NY: Palgrave 2017年』、『Social Capital Construction and Governance in Central Asia、NY: Palgrave 2017年』など多くを刊行している。

 

 また、比較の視座を用いながら中央アジア諸国の転換期における政策の形成過程を考察した英語(6冊)と日本語の研究書(6冊)を完成させ、数多くの研究論文をインパクトファクターの高い学術雑誌に投稿している。これらの出版物に対する国際的な評価は非常に高く、中央アジア地域における社会主義後の政治、人々の歴史認識やアイデンティティ、社会変容などに関する研究に大きく貢献している。

 

 以上のような多面的な研究業績を通じて、中央アジアに関する日本社会における理解はもとより、日本の対中央アジア政策に関して諸外国における理解についても大きく寄与したことは特筆に値する。

 

 なお、教育の面でも筑波大学において在籍する多くの学生の研究指導にとどまらず、中央アジアおよびロシア、ウクライナ、モンゴルなどからの留学生を受け入れる中央ユーラシア国費特別選抜特別プログラムの責任者として、研究・生活指導を行っている。

 

 すでに、同氏のこれまでの研究・教育活動は高い評価を受けており、佐藤栄作賞(2003年)、筑波大学人文社会研究科若手研究賞(2015年)と筑波大学BEST Faculty Member賞(2016年)を受賞している。

 

 以上のようなティムール ダダバエフ氏の研究能力や学術活動の実行力などを高く評価し、また中央アジア地域研究の新たな展開を期待して、大同生命地域研究奨励賞にふさわしい研究者として選考した。

(大同生命地域研究賞 選考委員会)